第4部 執筆者座談会

 

【発言者(市民)】

内藤哲文 KF理事長。谷保駅北口商店会会長。インテリアショップ経営

田中えり子 KF理事。地域情報誌「国立歩記」編集者。

渡辺辰郎 元Pro-Kリーダー(三期)。一橋大学経済学部卒。今はサラリーマン。

【発言者(一橋大生)】

小川真澄 商学部三年生。Pro-Kサブリーダー。書籍執筆チームのリーダー。商店街協同委員会に所属。

重竹良介 法学部三年生。新規事業検討委員会リーダー。

大塚達哉 商学部二年生。「カフェここたの」店長。

新川浩介 法学部二年生。「まちかど教室/まちかどホール」リーダー。

柴田史彰 社会学部二年生。商店街協同委員会所属。

【司会者】

菱沼勇介 元Pro-Kリーダー(一期)。一橋大学商学部卒。

 

 

・学生が地域のいろいろな人をつなげた

菱:今日は、この本の執筆にかかわった学生五名と、商店街の代表として内藤哲文さん、市民の代表として田中えり子さん、学生OB代表として渡辺辰郎さんに来てもらっています。それぞれがKFの活動を通じて感じたこと、考えていることを語ってもらいながら、この本を総括していこうと思います。まずは取材や編集を通して、改めてKFの活動について特徴的だなと感じたところを聞きたい。新川はどう?

新:商店街の人たちと学生の結びつきが強いところがほかの地域とは違うと思います。それも商店街の人たちが学生を一人の「まちづくりに携わる人」として迎えて、一緒に頑張ってきているところが特徴的だと感じました。

重:商店街の方の協力が厚かったのもあったと思いますけど、他の地域と違うより大きなポイントは、学生が街にいる多様な人をつなげることを意識して、実際にできたことだと思います。そこからいろんな事業が生まれていますし。自分たちで動くだけでは一過性で終わるけど、一度作ったつながりはなくならない。これが活動の継続や発展に寄与してるんじゃないかと思います。

塚:確かに。KFに出てくる一人一人が、まちづくりという柱を持ちつつもいろいろな方向性でアプローチしてくれたことが大切だと感じました。自分の得意な分野とか、趣味とか。それでいろんな人が関わってくれたんだと思いました。

菱:関わってくれた人をリスト化したら本当に多くなるよね。田中さんもその一人なわけですが、KFの特徴をどうお考えですか?

田:拠点を作ったことが、KFの大きな特徴、成果の一つじゃないかな。普段から店舗を維持することが何よりもまちづくりで大切って、改めて認識する。

菱:場所、空間っていうのは、まちづくりで大切なことですよね。そもそも商店街、つまり中心市街地はまちの真ん中に空間を持っている。そこを元気にしようというのがKFの基本的な考え方だったわけですし。ただ商店街としては、最初は学生に抵抗感がありましたよね?

内:学生が関わったのはKFが初めてではなかった。大学が商店街活性化という名目でアンケートをとったことが何度かあったけど、何の成果もなく終わってしまった。ただ、立ち上げのときはやる気のある人が二,三人いれば動けると思ってた。そのうちにみんなの理解が得られるだろうってことでね。

柴:内藤さん自身はどのようなスタンスだったんですか?

内:商店会長としての自分とKF理事長としての自分は違うと思ってる。商店会ではどんどん引っ張っていかないといけない、リーダーシップをとらなくちゃいけないけど、KFの主役はあくまで学生。学生と同じ立場で議論することを心がけるようにしているよ。僕らが知っていて学生が知らないこともあれば、その逆もあるわけだから、そこは補完し合って知恵を出し合うのが大切だよね。

小:商店主の方も、今では理解を示してくださっている方が増えていると思います。意識って変えられるって、取材を通じて感じました。

菱:小川は商店街協同の活動で感じたことはある?

小:今商店街の情報誌を作っているのですが、そこに載せるクーポンの協力をお願いしに行ったら、目標を大きく超える四〇店舗から提供していただけることになったんです(商店街の店舗数の約半分)。こんなに集まるとは思っていなかったのでびっくりしました。私たちへの期待もあるだろうし、応援してくださっているんだなと感じました。

菱:市民のほうは、抵抗感がありましたか?

田:「学生」に対する考え方はひとそれぞれ。潜在的にはウェルカムだったんだけど、はじめは学生への反発みたいなものが出てたかな。でも、学生に対する不信感は、もうなくなったと思う。地域は一橋の学生が出てくるのを待っていたんだと思う。

 

・一橋大学とビジネス、そしてまちづくり

菱:みんなに、なんでPro-Kに入ったのか聞いてみたい。

柴:僕が入った理由は、ここたのの雰囲気に惚れたから。あとは、仕事のできる人間になりたかった。

新:僕は、経営とかマーケティングとかに興味があったけど、地域活性化もやってみたかった。父の仕事の影響だと思いますが。あと、サークルの雰囲気が良かった。

重。僕の場合は、単純にビジネスをやりたかった。その気持は今も変わらずあります。新規事業ではかなりまちづくり寄りのアイディアを進めていますが。

小:私もビジネスがきっかけで入りました。店舗経営以外はほんと興味なくて、まちかどとか商店街協同とか、どうでもいいと思っていましたし。そんな考えをしていた人が今サブリーダーをやるようになったのは、自分でも信じられないです。二年生になってからまちづくりの意義を知ったりコミュニティビジネスの仕組みを理解したりして、KFの活動って実はすごいんじゃないの、と思うようになりました。でもそう思うようになったのは実はサブリーダーになる少し前のことです。

菱:最初はビジネスで入る人が多いよね。一橋にそういう人が多いのか、あるいはそういう人をターゲットに新入生の勧誘活動している?

重:両方だと思う。一橋の中でもビジネスに興味のある人をターゲットに勧誘している。

菱:店舗経営という名目で集めてから、まちづくりにシフトさせるのは成功している?

小:成功しているとは言えないです。私個人はこの書籍化活動でシフトできたけれど、他の人はなかなかまちづくりに興味を持つきっかけがないかなあと思います。

田:社会の問題を解決していく、つまり「まちづくり」が、みんなにとってビジネスを学ぶことにつながるはず。これからは、社会性のあるビジネスが求められる。大きな会社の経営者はそこを踏まえて事業経営しているんじゃないかな。

内:ビジネスとまちづくりは、切っても切り離せないと思う。ビジネスを成功させるためのまちづくりでもある。

重:ビジネスとまちづくりは切り離せないことだが、次元の高い、難しいことだと思います。まちづくりのほうに注力すると、ビジネスがおろそかになってしまう。

渡:ビジネスで成功することは重要だと思います。KFは商店街の人たちを変えなくてはいけないが、ビジネスで成功しないと格下だと思われて、意見を聞いてくれない。

 

・大変だけど、魅力的

渡:店舗経営に興味があって入るのはいいんだけど、実際やってみると大変なことも多くない?

塚:すごく大変です。何が一番優先すべき問題なのか分からないし、そのうちに新しい問題も増えてきて対処し続けなくちゃいけないので。

内:本当は店舗経営は一人でやると楽なんだよね。共同経営みたいになっているKFは、それだけでいろいろ大変なんじゃないかな。もっと気軽にやったほうがいいと思うよ。

田:学生は責任ある地位につくと固くなるのよね。柔軟でなくなって、型にはまった結論しか出てこなくなる。自分の持っているキャラクターを活かしてほしい。

小:そのほかに大変なのは、シフトに入る分の時間がとられてしまうことです。その時間があれば、アルバイトができたり資格試験の勉強ができたり、他のやりたいことができるので。ジレンマに陥る学生が必ず出ます。

菱:店舗経営でないプロジェクトにかかわっている柴田が大変だと思うことは?

柴: 商店街の意見と学生の意見を両方尊重することが大変です。大きな目標は「地域活性化」であっているのですが、そこにいくまでのアプローチがいろいろあるので。

菱:そういうふうに大変なことがいろいろある中で、なんで学生はやめないで頑張っているんだろう?

柴:KFの四年生になんでこの活動を頑張れているのか聞いたら、つながった市民の人、商店街の人と一緒にやっていて、励ましてもらえたからだと言っていました。市民とつながったから活動をできている面もありますけど、学生にとっては市民とのつながりが自分がここにとどまる意味にもなっていると思います。

菱:ここたの店長の大塚は、市民の方に励まされることが多いんじゃない?

塚:確かに、市民の方に「おいしかったよ」とか「頑張ってね」とか言われることはうれしいし、力になります。

新:あとは、サークル化したことも魅力作りにつながってると思います。頼れる先輩がいて、後輩がいて、その環境の中で一緒に仕事をやっていくことで絆が深まっていく。それを日々感じています。

菱:連帯、絆が重要ということだね。みんな、地域、まちに入っていくことはやっぱり楽しい?

小:いろいろな人に会って、いろいろな考え方に触れるのが楽しい。新鮮な発見がある。

重:そうだね。高校までは家族とか友人とか先生とか、決まったタイプの人としか会わなかった。まちづくりでまちに入っていくと、本当に違ったタイプの人たちに会う。「商店主」といってもひとくくりにはできない。いろんな出会いが刺激になって、自分の生き方を見つめなおす機会になっているのはいいなあと思います。

渡:確かにこの活動は、いままで体験したことがなくて、今後も普通に生きていたら体験することがなさそうなことだから魅力的なんだと思います。お祭りとか。会社の上司と商店街のおやじさんではキャラクターが違うし。

 

・成長させてくれるフィールド

菱:入ってみて成長したなと思うところは?

重:すごく考えるようになったし、一方で全然考えないで行動できるようになった。あとは、いろんな物事を違う視点から考えられるようになりました。

内:学生の場合は、考えすぎずにどんどんやるのがいいと思う。

塚:僕が成長したと感じるところは、自分に自信を持つようになったこと。ちゃんと自分が前に進んでいることを実感できます。

小:私は、まだ成長を実感できてないです。まだああなりたい、こうなりたいっていうイメージがたくさんある。

内:学生自身が自分で成長を実感できていなくても、僕らから見るとわかりますよ。

新:僕は、組織の一員であるとはどういうことなのかが理解できるようになったと思います。組織に自分がどういう影響を与えているのかをわかるようになったし、同級生からも刺激を受けています。

菱:やっぱりまちは若者を成長させてくれるフィールドだよ。ぜひとも全国の学生に、教室から飛び出すことを勧めたいな。

内:学生はどんどん失敗を恐れずにやってほしいね。そのためにまちにいるといってもいいくらいだよ。ブレーキは大人が踏めばいいんだから。

 

・異質なものが組み合わさるまちへ

菱:今後みんなはPro-Kで何をしたい?

柴:僕は、商店街に特化した何かをやりたい。商店街のお店同士をつなげる何か、あるいは商店街の魅力をあげる何か。

塚:僕は大規模なことがやりたい。国立市外とか、規模をもっと大きな視点で見たい。国立の人が一気に盛り上がるお祭りとか、東京都の人が集まるものも考えたい。

小:私は、商店街協同ではおかみさん会を作りたい。きっと素敵なものが生まれると思います。Pro-Kでは、内部で勉強会を開いてインプットの機会を増やしたいです。あとは、会議を有意義なものにするとか、みんなに楽しく活動してほしいとか、国立市のまちづくり、全国のまちづくりがどうなっているのか知っていきたいです。

新:僕は、もし一〇年後にもう一度KFの本を書くとなったら、その本に自分の名前が載る活動をしたいと思います。

渡:富士見台の未来はどうなっていてほしい?

柴:地域密着型と観光地型を両立したまちになってほしいです。矛盾しているけれど、矛盾を超えられればいい。

重:異質なものが組み合わされば何かが生まれると思うんです。KFも、学生と商店街と行政のコラボレーションですし。これからも、異質なものが出会うまちであってほしいと思います。

田:私は、KFが、現場を大切にしながらシンクタンク的な機能を持てればいいと思う。日本や世界に発信したい。ここからグローバルな課題を解決するものも出てきてほしい。

内:富士見台が情報の発信拠点になるといいなと思うね。

菱:なるほど。人と人とをつなげて、そこからどういう価値を生み出せるのかが大切なんじゃないかと思いました。さて最後に。今回の本のテーマは、他地域のまちづくりに携わっている人たちを元気づけようというものでした。KFが全国のまちづくりを元気づける要素はいろいろあると思いますが、田中さんはどうお考えですか?

田:対等、つながり、活かす。そういうビジョンとかスタンスとかが大切。相手のために、一方通行でやっているわけではない。そこが読者の方に伝わればいいと思うな。

菱:内藤さんは、他の商店街に大学とのコラボレーションを勧めたいですか?

内:もちろん。KFを参考にしてやってもらいたい。KFにはラッキーも多かったから、簡単だということではないけどね。でも富士見台だけが活性化すればいいとは思わないからね。

菱:じゃあ最後に、執筆者を代表して小川から、他地域のまちづくりに携わる人たちに一言。

小:ひと一人でできることは限られています。でも、理念や情熱があれば、必ず協力してくれる人がいる。内藤さんのおっしゃった、「最初は二、三人やる気のある人がいればなんとかなる」の精神が大事だと思います。やる気ある方々が、まちを変える起爆剤となることを望みます。